いや、貴族の朝食だと普通なのだろうかとエリザは悩む。

「まぁ、ジークハルト様の件に関しては私も嬉しいですよ。ただ、症状を引き起こしている〝呪い〟の方が解けるのであって、女性恐怖症が完治するわけではないので、そこまで期待されるとすごく緊張するといいますか…………」
「どうして緊張されるのです?」
「だって、すぐ縁談事情やらが進むわけではないですし」

 すると廊下をすれ違っていった使用人達も含めて、エリザへ揃ってにーっこりと笑みを浮かべてきた。

「なんですか?」
「ふふ、なんでも」

 目が合ったメイド達も、エリザの視線をかわして歩き去っていく。

 モニカが「おっほん」と珍しい感じで、エリザの注意を引きつけた。

「跡取りですから、ジークハルト様にはそろそろ結婚相手を決めていただかないといけませんが、そこは今のところ気にされなくてもよろしいのですわ。今までのジークハルト様にしてみたら大きな改善です。まさかいにしえの魔法だとは思いもよりませんでしたが、私達が支度を手伝えない日々にもストレスが溜まっておりましたから」