「どうせ暗くてあまり見えませんから、ローブは取りませんか?」

 ふと、ジークハルトがそう言った。

「あなたも堅苦しいでしょう」
「まぁ重さはありますけど、これはこれで安定感はありますよ」

 魔術師団のマントコートは『いつでも戦いに入れるように』と教えられていた。一人になってからはとくに警戒して、外すのは就寝時くらいなものだ。

(というか、このくらいの明るさだと互いがばっちり見えるんだけど、なんで配慮みたいに『見えない』と言ったんだろう?)

 エリザは、ゆっくりと右に首を傾いだ。

 その様子をじっと見つめていたジークハルトが、ややあって心でも読んだみたいに言う。

「中の服を見られるのは、やはりまずいですか?」

 妙な質問だとエリザは思った。

「いえ? 別に服が見えても構わないのですが」
「本当ですか? それなら、ぜひ」

 なぜか彼が枕から頭を上げ、上体を起こした。

(どうして食い入るように見てくるんだろう?)

 確かに羽織ると重みがあるので気は張るが、でも脱ぐとリラックスしすぎて寝てしまわないかエリザは少し心配する。

「ほら、あなたは仕事衣装じゃないですか」
「それはそうですが」
「できればあなたにもリラックスしていただきたいと思って。これは仕事ではなくて、寝るまで一緒にいる友人同士のように寛いで欲しいというか」