失礼しますと囁くような声で言いながら、そっと扉を開けた。

 室内はベッドのサイドテーブルに優しい灯りがあった。

 大きな窓から差し込む月明かりで室内は歩くのにも困らなくて、エリザは光を目指してとことこと駆け寄る。

「お待たせいたしました」
「こちらこそ、頼んでしまってすみません」

 ジークハルトはベッドの枕に頭を乗せ、掛け布団をしっかり引き寄せていた。

 こちらを見ている彼の顔を見た一瞬、エリザは窓からの月明かりもあって、彼の美貌がさらに際立って浮かんでいるような気がした。

 だが、エリザが気の引ける思いを抱く直前には、ジークハルトがにこっと笑って『おいでおいで』と手招きしてくる。寝具を子供みたいに首までかぶった姿は、普段紳士然としている彼の印象と違ってどこか幼くも感じる。

「それでは、失礼しますね」

 エリザはほっとしてサイドテーブルの長椅子をベッドの脇に寄せ、ローブを整えてから腰を下ろした。

 ローブの内側でちょこんと揃えた膝の上に、絵本を置く。