(予想通りではあるけど、顔に似合わず容赦ないんだよね……)

 それに少しは付き合えるルディオが、すごいなと改めて思った。

 とはいえ寝るにしてはまだ早い。少しでも気を抜くと速攻で負かされるので、心折れることなくジークハルトに付き合おうではないか。

「よし。じゃあ、またやりますか――」
「待ってください」

 新しいゲームのためチェスを用意しようとしたら、その手を上から、大きな手にそっと包まれた。

 なんだろうと思って見上げると、彼の青い目が穏やかに微笑む。

「気晴らしに、読書はどうですか?」
「読書?」
「あなたも好きでしょう?」

 好きか、と言われると戦闘訓練も卒業してからは、確かに食べる以外にハマるのは一人コツコツと楽しめる読書ではあった。

(うん、意外に、すごく高価なんだよね)

 それが読み放題、選び放題というのも贅沢な環境だ。

 というわけでチェスをいったんしまい、向かい合わせに置かれてある三人掛けのソファを、それぞれ独占して読書した。