呪解薬について話しを聞かされてから、二日後。

 夕食のあと、一緒に食べたルディオがジークハルトと私室でチェスをし、エリザは三人掛けソファを一人占めして贅沢にも読書に耽っていた時だった。

「少々よろしいですか?」

 執事のセバスチャンがエリザを廊下へと一人呼び、例の呪解薬が、明日には届けられそうだという知らせを持ってきた。

 ジークハルトにかけられている術については、フィサリウスからラドフォード公爵にも共有され、彼から公爵邸の全員に説明がされていた。

 女性恐怖症の改善に大きな一歩になると、使用人達はこぞって呪解薬の効果に期待を寄せている。

「完成したものが問題なく魔術研究課の検査を通過いたしましたら、こちらへ早馬を走らせるそうです。早くて日中、遅くても夕刻までには届くかと」

 セバスチャンはにこやかにそう報告し、去っていった。

(そっか、それなら明日には……)

 明日いっぱいで、今日まで続いた治療係としての〝すべて〟が終わる。