(とすると、ルディオが結婚させられる説は消えたな)

 その幼馴染は、完全にそういった気持ちはない。

 その時エリザは、扉が薄らと開いているのに気付いた。

 そこからメイド達が、ハンカチを目元にあてて「旦那様、可哀そう」などと言っている。近くにいるセバスチャンが頷いている。

(どうしよう。気を強くもないと意識も目も持っていかれそう)

 というわけで、エリザはそちらへ目がいかないよう、とにかく強くラドフォード公爵を見据えなければならなくなった。

「あの、失礼ですが、つまり子息様は男色家ではないということですよね……? 結婚願望はあるから泣いたとか?」
「結婚したいかどうかは分からないんだ。縁談のことを出すたび倒れてしまうから」

 なんたる脆弱――じゃなくて、ここは失望する顔は出してはいけない。

「なねほど」

 エリザは、無理やり真面目な顔を作って頷いた。