何が便利なのかは知らない。魔力がないのに不思議なもんだとゼットは笑っていた。エリザは、母が使っていた魔術と同じだと言われて、ニッと笑い返した。

 何より、ゼットがいい意味で前向きだったからエリザは救われた。

 彼なりの父親代わりの愛情で育てられた。その方法は、ちょっと変わっていたけれど――。

「よっしゃまずはつっこめ!」
「嘘でしょ師匠おおおおおおおおお!?」

 何よりも実践で、体力作りと身体に合った体術の会得をした。

 何度死ぬ思いをしたか分からない。

「魔物に対しては最強とはいえ、浄化する前にかみ殺されたら意味がねぇ。やばい攻撃はかわすんだ。ああ、それから山賊なんかにも気を付けて、体術もそれなのにしっかりな」
「今、魔物の集団に襲われている私を見物しながら言うことですか!? 何その浮く便利な魔術は!? 助けろドアホー!」
「自分で助かれ、その魔物は小さいぞ」

 狼サイズはあるよ、とエリザは思った。