「おー、さすがは殿下。国で一番の魔法使いで、そのうえ研究者だもんなぁ」
「呪いが解けたらお祝いでね!」

 そうしたらジークハルトは、今よりも女性に怯えなくなって済む。

 だが、ルディオは親友の呪いがなくなることを喜んだばかりなのに、なんだか先程見たフィサリウスみたいな反応をした。

「吉と出るか、凶と出るかによるなぁ……」
「はい?」
「もしかしたら騒ぎになって、それどころじゃなくなるかもだし?」

 いったいなんの『騒ぎ』だというのだろう。

 訝って顔を顰めていたエリザは、不意に後ろから腕が回ってきて驚いた。

「う、うわぁあぁあ!? 私が気配を感じないとかいったい何者――」
「こんなところで二人、何をしているんです?」

 肩越しにハッと見上げて、エリザはなんだと拍子抜けした。

「ジークハルト様!」
「ルディオは僕の親友ですが、楽しく内緒話をされていると妬けますね」
「あはは、冗談が冴えてますね~」

 エリザは笑った。そばでルディオが、唇にきゅっと力を入れて黙り込んでいた。