エリザは聞き届け、うんうんと頷きながら一度紅茶で落ち着けた。

 ティーカップを置いたところで、言う。

「それ、私にできる治療方法ではないですね。ちんぷんかんぷんなうえ、不可能な技術が多々混じっています」
「あはは、それはこちらで用意するから大丈夫。とくに強い私の魔法で作ってあげるから効果は百パーセント保証するよ」
「それは頼もしいです」
「君の役目は、ジークに飲ませることだよ。君の言葉なら素直に聞いてくれるだろう?」

 まるで、本来ジークハルトは警戒心が強い生き物だ、と遠回しに確認されてもいる気がする。

(おかしいな。私と殿下の間に、彼に対するイメージの違いの大きさが)

 エリザは、進んでお菓子を受け取るジークハルトを何個も思い浮かべた。

(というか、貴族の子息がそうって、まずくない?)

 普通『貴族』となると、毒見係だっているだろう。

 ジークハルト自身もそれを警戒するべきでは、とエリザは余計なお世話を考えてしまった。