精霊も、進んで誰にでも〝魔法〟を使わせたわけではないと思う。

 代わりにその人に魔法を掛けに行くのだって、きっと何か彼らにご褒美になることがあった。

(それが、たぶん『魔力』なんだろうな)

 元々、この国の人々は持っていたのだ。

 使い方を知らなかっただけなのではないかとエリザは考えた。

 だって、ただの人間がある日急に魔法を使えるようになっただけなら、魔法使いの人口はもっと希少種だと思うのだ。

 大昔、この国にあった『精霊の魔法』とやらは、召喚魔術みたいなものなのだろう。

(そして取引きが成立したら、精霊は、糧になる魔力を貰った――のかも?)

「何か考えてる?」

 向かい側の王子様には、目敏く察知されたようだ。

 エリザは、自分の故郷の土地の魔術師という環境から、自分が考えた当時の『精霊の魔法』について一つの可能性を説明してあげた。

「それで、殿下が見つけてくださった解除の方法は?」
「月の出ている夜に、水面に映った月にタタラの小枝を落として魔力を注いだあと、その枝自体を魔法で水に変える。それが聖水になるから、あとは魔法使いが作れる『魔力石』を削ったものを混ぜれば完成。それを飲ませれば解除できるよ」