「おまじない……とすると、大昔の?」
「そう。効くかも分からない迷信や気休めも一つ、けれど君から言わせると〝魔術〟というものだったかな?」

 エリザは、ティーカップを両手に持ったままこくりと頷く。

「その地方では、恋が叶うとして少数本に刷られているモノであるらしい。子供でもできることだよ。必要なのは指定された木の枝が三本、白い鳥の花、ピンクの花びら、それを想い人がいる家の敷地で、長い草で巻いて土に埋める」
「ははぁ、それはまさに魔術の一種ですね」

 クリスティーナは、ジークハルトが幼い頃、同世代の子供たちがラドフォード公爵邸に呼ばれた際にいた。

 庭園も解放されてのパーティーだったらしいから、土敷地内の土に術具を埋められる可能性も十分。

 それでいて、たくさんの子供たちがいたはずだから、子供でもできるという簡単な『おまじない』の言葉一つ唱えるくらい、造作もないだろう。

「とすると太陽の位置やタイミングが不運にも偶然一致してしまって、本物の魔術になってしまった、というわけですね」