「こ、このままでは『公爵家の嫡男なのに』とか悪評が立つかもしれないと考えると、申し訳なくてっ。私が治療係じゃなかったらこれほどまでにひどい副作用も出なかったと思うと……!」
「待った。ストップ、とりあえず落ち着いて」

 手の前にずいっと手を出されて、エリザはきょとんとした。

「まさか辞めた方がいいかもとか考えてる?」
「はい、私が治療係じゃない方がいいのではないかなと思って」
「それはだめ、やめよう、絶対に。うん」

 なぜかフィサリウスが力強くそう言った。

「君が『辞めます』なんて置手紙して屋敷から去ったら、それこそ大変な事になるから、絶対にやらないでね。ほんと、片っぱしから手当たり次第に壊滅させられるから」
「壊滅……?」

 やばい、泣いて頭が回っていないのか理解できない。

 ひとまずフィサリウスが自分を引き留めていることは分かってので、エリザは彼をじっと見つめ返した。

「私、ジークハルト様に奇行をさせちゃっている状態なんですが、まだ治療係として役に立つんですか?」
「うん。むしろ君じゃなかったら困る。出会った頃くらいだったら、まだどうにかなったかもしれないけど」