それから王宮の廊下であったキャンディーのあと、屋敷に戻った夜も、ジークハルトに「怖い夢を見そうなので眠るまでお話をしてください」というおねだりをしつこくされるという出来事があった。

 エリザは男だと思われているが、女なのだ。

 同衾なんて絶っっっ対に無理。エリザが、異性と添い寝とかできない。

 というか、へたしたらバレて大変なことになる。これまで築き上げた治療係とその生徒(?)であるジークハルトの信頼関係が損なわれるうえ、彼が女性恐怖症で寝込むことになって翌日出仕できなかったら、全責任を負える自信がない。

「王子様に『仕事たせて』と言われているのに、それもできなくなったら治療係としてどんな罰がされるか分からないし……うっうっ……」
「あはは、もうツッコミどころいっぱいなんだけど、そもそもジークって怖い夢がどうのっていうタイプだったかな?」

 エリザは、話しの途中途中に放り込まれるフィサリスの言葉は聞いていなかった。