「ん」

 ジークハルトが理解したと言わんばかりに頷いた。

 舌先で転がされたキャンディーが指に触れた。彼がエリザの指の一つをまずは絡め取り、唇の外にそっと押し出した。

「違う違う違うっ、ジークハルト様! 指!」
「ン」

 分かっているから、というようにジークハルトが頷いた。まだ口の中に残っている指に吸い付かれて、エリザは言葉が詰まった。

(多分全然伝わってないよね! 丁寧に指を返せって言ってるんじゃなくて、あなたが唇を開いてくれれば済むって伝えてんだけど!?)

 ようやく解放された時、エリザはどっと疲れてしまっていた。

 ジークハルトがハンカチで当然のように丁寧に拭っていることに対して、ツッコミも出てこない。

「キャンディーをありがとうございました」
「はぁ、どういたしまして……」

 今度からは、彼の『キャンディーを食べさせて』には絶対に応えないようにしようとエリザは心に誓った。

 胸がやけにどきどきしている。彼の顔を見たら顔が熱くなってくるし、困る。