(うん、分かった。それは分かったから、早く指を返して欲しいっ)

 エリザがその思いを伝えようとした時、口の中のキャンディーを引き寄せようとしたのか、彼の舌先が指をぬるりとかすった。

「わあぁっ、ちょっと待ってっ」

 その生温かい感触に、思わず腰が逃げる。しかしジークハルトの唇はしっかりと閉じられているようで、指が抜けない。

 その際にガン見してしまったエリザは、濡れた色っぽい唇に固まった。

 イケメンの口に、指を食べられている。

 みるみるうちに羞恥で顔が真っ赤になった。一度意識してしまったら、もうだめだ。心臓はばくばくして、目も潤んで、情けないとか思っている場合ではないと必死に訴えた。

「ジ、ジークハルト様、指……!」

 言葉がうまく選べない。

 あまりの動揺っぷりで動けないでいると、正面から真っ直ぐ視線が絡んだジークハルトの青い目が――愉快そうに細められた、気がした。

 エリザは一瞬、あれ、と疑問を覚えた。騒ぐ後ろでルディオが額に手を当てて溜息を吐いている。