大きな男の人が素直に口を開けて待っているのって、結構可愛いんじゃ、なんて思うのはくらくらするこの美貌のせいか。

(まずい、意識したら緊張してきた。これ唇に当たるんじゃない?)

 キャンディーを持った指を近付けたら、生温かい吐息に思わず手が止まる。

「エリオ」
「は、はいっ、どうぞ……!」

 覚悟を決めて彼の口へキャンディーをコロンっと押し込んだ。ふにゅっと手にあたった唇の感触にぶわっと顔が熱くなる。

(うわぁあぁぁっ、この前私の頬にキスした唇の感触が!)

 なんでこんな時に記憶から引っ張り出すの、バカなんじゃないのとか自分に悪態を吐いたものの、シークハルトにパクリと指ごと食べられた。

「は――えっ、きゃああああああ!?」

 予想もしていなかった展開に悲鳴が口から飛び出た。

 ジークハルトが、こちらを見た。悪気はなかったのだと、実に申し訳なさそうな雰囲気を表情に浮かべた。

 間違って食べてしまいました、と言っているみたいだ。