ラドフォード公爵が、吐息混じりの声でそう切り出した。

(ああ、やはりそうか)

 彼は例の幼馴染の父親で、ルディオから性別のことも聞いていたのだ。

 エリザは溜息をこらえた。しかし誠意を装ったものの、内心『あのヤロー』と初めて殺意を抱いた。

「彼から聞いているとは思うが、ルディオは私の息子の親友でもあるのだが……私の息子のことは聞いてるね?」
「その、詳しくは存じませんが……女性恐怖症だとか?」

 巻き込まれる予感に、つい言葉がつっかえた。脳裏に浮かんだルディオの呑気な面に、想像の中で鉄拳を三発ほど入れてはいた。

「そうなのだよ。どの医者も専門家も手を上げている」

 ラドフォード公爵が、事実を肯定して肩を落とした。ティーカップを引き寄せて、音を立てないよう蜂蜜を少し入れる。

「君も飲むといい。ルディオからは好んでいるとは聞いた」
「えっと、その……はい、いただきます」

 紅茶は高い嗜好品だった。

 ハーブか薬草の茶葉の方が、安価で一般的に出回っている。