「それに就職するとなると、身元が難しいと思うんだよねぇ」

 魔力を持っていないことはフィサリウスに見抜かれてている。

 この国に一握りいるという、彼並みの『強い魔法使い』には分かることなのだ。

 あやしまれるし、どううまく説明したら魔法使いという身分で職に就けるのか――とか考えると、もう頭が痛くなるのでやめた。

 それをルディオに正直に告げたら、彼が噴き出した。

「ははっ、なんだ、じゃあ問題ないな」
「何が?」

 その時、笑っていたルディオの目が回廊へ向いた。

「友人歴が長いとはいえ、ルディオとばかり話されると面白くありませんね。僕は頑張ってきたのに」

 首の前にするりと大きな手が回り、エリザは一瞬で意識が背後に向いた。

 それは数日前に感じさせられたばかりなので、すぐに誰なのか頭に浮かんだ。そっと引き寄せられる感覚を覚えながら素早く肩越しに見上げると、赤い髪を面白そうにくすぐるジークハルトの姿があった。

「ジークシルト様っ」
「ちゃんと僕の頑張りを見てましたか? 僕の治療係殿」