「そうだと思う。意外と大丈夫なんだって本人がちょっとは自覚したのかも」

 ジークハルトが、父と家同士の付き合いで侯爵夫人とは知り合いだと言っていた。それを聞いて、エリザは早速『挨拶してきなさい』と課題を与えたわけだ。

 その様子を、彼女はルディオと共に支柱から見守っていた。

「かれこれ十三分! 目をそらさないでってのは、新記録だ」

 近衛騎士隊の紋章が刻まれた懐中時計を再び開いて、ルディオが「すげぇな」と感心した声を上げた。

 以前、ジークハルトは『女性と面して話すのは十分ももちません!』と堂々な避けないことを主張してパーティーに臨んでいたわけだが、ここで見事、己の限界時間を突破したわけだ。

「意識してハードルを上げた特訓効果も出ているとしたら、私の判断は間違っていなかったな」

 ふっ、とエリザは得意げに顎に指を添える。

「あ~、治療係の終了期限のことか?」

 彼女は支柱から向こうを覗き込んで「うん」と答えた。

 それを見ながらルディオは、頭の後ろをかき「なんだかなぁ」と呟く。