翌日から、通常の〝治療〟が始まった。

 フィサリウスから『呪い』の話を聞かされる前と方針は変わらず、とにかくジークハルトに女性との接しに慣れてもらうことだ。

 ジークハルトは先日のご乱心がなかったみたいに通常運転だった。

 いつも通り専属の治療係としてエリザは王宮へも同行したのだが、彼はメイドを目にすると「ひっ」と短い悲鳴を上げ、半分以上の確率でエリザを盾にした。

(それじゃだめなんだよねぇ)

 というか、人様の肩を掴める癖にどうなっているんだ。

 ショックが意外にも尾を引いていてそう思ったものの、もちろん空気が読めるエリザはしなかった。

「ジークハルト様、すれちがうだけです。そこに追加で絵顔の課題を課します」

 ルディオは「お前鬼だな~」なんてのんきな感想を口にしていた。

 だって、それくらいならなんとか数をこなせるようになってきたのだ。

 距離がまぁまぁ開いていれば、ジークハルトは王子然とした、あの社交用の爽やかな微笑みで女性達に応えることができた。