「……私のこと、何歳だと思っているだろう」
「いや、みんな知ってるよ。十八歳だよね、うん。立派な成人だ」

 ですよね、とエリザは口にして疑問顔のまま頷く。

「それでは、ジークハルト様の明日の出勤からさらなる特訓、いえ治療を始めますね!」
「確かに特訓という言い方は間違いないな。ふふ、強い魔法使いとは思えないくらい賑やかな人だ」

 もう話は以上のようだ。しかしながら、笑っていたラドフォード公爵の目が、ふっとそらされて悟ったようになる。

「そう、成人なんだよね……成人……うん」
「何か問題でも? あっ、次に会う令嬢のお話でももう出てます?」
「いや、出てないよ、その――予想外にも手を回されるのが早くて我が息子ながら、優秀だなぁ、と」

 彼が顔をゆっくり左右に振った。王宮の仕事関係で、何か話でも聞いたのだろうか。

 ひとまず、お互いに今日はロッカス伯爵家の来訪を受けて、お疲れ様だ。エリザは笑顔で改めてラドフォード公爵にそう告げ、書斎をあとにした。

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