咄嗟に視線を逃がそうとしたら、首に手が回って彼が顎を支えた。

 そこに感じた高い体温に「うぎゃっ」と今度こそ声が出た。しかも喉をすりすりと撫でるのは、やめていただきたい。

「どうして?」
「あ、いや、別に異変がないんならそれていいんですよ、うん」

 御身のために言ったのだが、言葉を返してくる際に彼の腕が動くらしいと分かって、エリザはもう黙っていることにした。

(しかし、これだけ密着しているのにバレないって、逆に私すごい……)

 なんだかショックを受けた。諦めた気持ちでぽすんっと頭の横をベッドに置いたら、彼の手がようやく首から離れてくれる。

 ジークハルトはそんなエリザを眺め、蕩けるように目を細めた。

「それでは、少しの間、おやすみなさい」

 大事そうにエリザを引き寄せて胸に閉じ込める。同性相手にしては落ち着かない気持ちになる力加減だと思っていたら、頭にちゅっとキスをされるのを感じた。

(ああ、もうだめだ。少し寝よう)

 本気で頭を抱えたくなったエリザは、現実逃避でいったん眠ることにした。

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