(そう、男じゃないとバレていないなら、それでよし)

 男同士ならおかしくない。というか、そう思っている自分にも泣きたくなるのだが、そうか、抱き締めていても全然女だとバレないのか……。

 なぜ彼の女性を極度に怖がる感知能力は、ここにきても役に立たないのだろうか?

「というわけで、一緒に仮眠してもらっても?」
「まぁ、それでジークハルト様が落ち着いてくださるのなら」

 つい、ぽろっと口から本音が出た。

 これまでの心配事は懸念でしかなかったのだと思ったら、どっと疲れてしまって、バレないんならいいかと彼の腕の中でぐったりする。

(でも『呪い』の副産物とはいえ、ほっぺを舐めるとかキスするとか、懐き度合い、いや親愛度も過ぎている……)

 身を預けたエリザに、ジークハルトがくすりと笑った。

「少し休んだら、軽食を取ると約束します」

 彼が身じろぎして抱え直してくる。

「あの、それ以上密着するのはやめていただけませんかね……?」

 エリザは気になって後ろを見た。思ったよりも近くあった彼の青い目に、もう少しのところで色気のない悲鳴を上げるところだった。