「すみません、信頼する治療係がいなくなるのが怖いとか?」
「違いますよ」

 ジークハルトが断言した。彼に手を取られ、エリザはなんだと思いながら、けれどなんだか嫌な予感もして口元を引きつらせながら見ていた。

「僕が欲しいのは、エリオ、あなたです」

 彼がちゅっと手の甲に唇をつける。

 それはレイヤが触れてきた感じとは全然違っていた。とても落ち着かなくなるような、しっとりとした感触が肌に残る気がする。

 いや、愛の告白日をされているので落ち着かないのは当然か――。

(――うん、なんでそうなる!)

 これは、男だと思われているうえで、さらなるとんでもない勘違いをされている。

 奪われたくないとか思うのは、彼は『呪い』を持っているから無意識に浄化作用の安らぎを感じて、離れたがいと感じているだけなのだ。

「困ります、無理です」

 ひとまず、告白に対して正解と思える返答をしてみた。

「困ると言われないくらい大切にしますし、無理と答えられないくらい僕のものであると愛を刻みます」
「刻むって何!?」

 指先にキスして見据えてきたジークハルトの目が、非常に怖い。