ジークハルトはエリザの両手をしっかりと押さえつけたまま、頬、目尻、こめ髪、と次々にキスを落としていく。

 くすぐったさと羞恥でエリザは目が回りそうになった。というか、恥ずかしさで顔が真っ赤になっている自信がある。

「こ、これって挨拶のキスとは絶対に違いますよね!?」
「ああよかった、恥じらう気持ちはあるんですね。ですが残念、これは『挨拶のキス』ですよ。ええ、紛れもない親愛のキスです。あなたが知らないのなら俺が教えてあげます」

 舌の感触を強く伝えるように、耳すれすれの位置をわざと時間をかけるように舐め上げられ、エリザはかちーんっと固まった。

 これはキスではなく、舐め、である。

(え、えっ、どういうこと? やっぱり打ちどころがまずかったのでは……!?)

 ルディオめ!と心の中でとりあえず叫んでみる。

 そうでなければ、混乱でどうにかなってしまいそうだった。なぜジークハルトにベッドに引き込まれているのかまるで訳が分からないし、こういう過度な接触はさすがに『聖女の浄化作用』があったとしても、彼に女性恐怖症の症状を引き起こして、性別が女であるとバレる可能性があって大変危険でもあり――。

 というか早くベッドから逃げ出したい。