「えーと……ああ、確か右ですね」
「そうですか。分かりました」

 彼の顔が不意に近付き、ふっと影がかかった。

 エリザがびっくりした次の瞬間、ジークハルトが右頬をペロリと舐めていた。

 舐められたという驚きと、なぜ舐められたのだろうという疑問で頭がいっぱいになった。とにかく咄嗟に彼の頭を押さる。

「なぜ舐めたんですか!?」
「間違えました。ですから、大人しくしていてください」

 あっさり手をベッドに押しつけられた。足をばたばたしても効果がなく、今度はちゅっと吸われる。

 いや、されたのはキスだ。一度離れたと思ったら、ちゅっ、ちゅと位置をわずかにズラしてされて、エリザはたまらず叫ぶ。

「ちょっ、な、何をしているんですかっ!」
「ですから『親愛のキス』です。……俺の方が先にあなたを見付けたのに、許せない」

 低い声が思っていた以上に近く、ぞくりとした直後、今度は左側を舐められてエリザは飛び上がった。

(ま、また舐めた!)