「茶会ではつまみも口にできなかったようなんで、きっと腹を空かせているでしょうなぁ」
「空腹でも起きないんですか?」
「就寝したらきっちり起きるんだが、気絶となるとだいたい四時間くらいかなぁ」

 起床したら、昼食を抜いた分、軽食をとらせたいと言う。

 目覚めたらすぐに知らせて欲しいとサジに頼まれて、エリザはそれを引き受けた。

 ジークハルトの寝室へ訪れてみると、彼はみんなで運び込んだ時と同じ綺麗な姿勢で眠っていた。

(寝息が聞こえるのが、なんだか慣れないな……)

 ひとまずまだ風も冷たくないので、残りの窓も開けて外の音を入れて気を紛らわせることにした。

 起きたら、お疲れ様と言ってあげよう。

 今回は大きな課題を与えた自覚はあるので、エリザはそう決めて、彼のベッドのそばに椅子を置き、本を開いて時間を潰した。

 間もなく馬車が帰って来る音がした。

 扉の向こうを使用人達が移動する足音が聞こえて、また静かになる。