(まるで嵐のよう……)

 エリザは、親友と念押しされたことに首を捻った。

(この大陸の男同士の友情って、よく分からないなぁ)

 ルディオは友人だけどしないし、親友枠ならする感じなのだろうか。そう思ってエリザが頬を撫でた時、後ろからブチンと何かが切れる音がした。

「挨拶、ですか……」

 地を這うような低い声で、一瞬誰のものなのか分からなかった。

 直後、セバスチャンの「ルディオ様」と言う声が聞こえて、ルディオが「ごめん!」と謝る声が聞こえ――ごすっという音が上がった。

 エリザが振り返った時、真後ろでジークハルトが地面に倒れていた。

「え、何これ。ルディオ、なんてことしてんの」

 手刀の姿勢でそこにいることから、犯人はルディオだと分かった。

 ラドフォード公爵が苦い表情で視線を巡らせ、深い溜息を吐いた。セバスチャンが冷静な顔で一つ頷き、公爵邸の護衛を呼んでジークハルトを運ばせ始める。

「何って。我慢してたのが、ここに来ていきなりプッツンしたから、暴れる前に落としたんだよ」
「……意識を?」
「そう」

 意味が分からん、とエリザと思った。いつ来るのかと思ってたけど時差ってのは初めてだなとルディオは笑っていた。