それに、まさかこんなに身近にいた令嬢が『まじない』を行った本人だなんて、誰も思っていなかったものだから驚きが大きすぎた。

 その時だった。レイヤが若干興奮した様子でエリザと繋いで手を引っ張った。

「父と妹に紹介したい」
「えっ? ――あっ」

 彼が手を繋いだまま急く足で進み出した。向かいながら、クリスティーナに大きく手を振る。

「クリス! 僕の親友のエリオだぞ! 父上、仲良くなりましたっ」
「まぁ、素敵ですわ! やはり仲良くなられたのですね!」

 クリスティーナが可愛らしく両手を合わせる。

(うげっ)

 エリザはラドフォード公爵がぎこちない笑みを浮かべるそばで、着飾った小太りの中年紳士が「素晴らしい!」と息子に応えるのを見た。

 ロッカス伯爵だ。なんというか、目が合ったらとんでもなく輝いている。

 合流したレイヤが口を開こうとした。しかしジークハルトが二組の間に立ち、にっこりと笑って言う。

「クリスティーナ嬢は以前にも一度お顔を会わせたことがあるかと思いますが、ロッカス伯爵、彼が〝僕の〟治療係のエリオです」