蝶がうまく罠にかかったところで、エリザは植物の芯を紐代わりにして蝶の胴体に手早く軽く結び、レイヤに「どうぞ」と手渡した。

「すごいな! 紐の先で超が飛んでるぞっ」
「少ししたら、こうして紐を外してあげるんです」

 やり方を一通り見せると、次は自分でもやりたいとレイヤが言い出し、エリザはそれに付き合った。

 レイヤは傷つけず蝶に結ぶことに苦戦していた。時間はあっという間に過ぎて、けれど成功した時には疲労感よりも達成感が大きかった。

「細かい作業だな、もう目が限界だ」

 彼が満足げに草の上に仰向けに寝転がった。

 秋先とはいえ、日中はそれなりに暖かい。マントコートの中が熱くなって汗をかいたエリザも、風の恩恵を受けるべく彼の隣で横になった。

 目の前見えるのは、午前中の青い空だ。だいぶ太陽は高い位置まで移動している。

 茶会は正午前までの予定だったから、しばらくしたらレイヤを送らないといけないだろう。

「こんなふうに遊んだのは初めてだ」

 空を眺めたまま、レイヤが言った。