「【赤い魔法使い】と名をいただいた強い魔法使いだろう。あっ、だから十六歳の僕は相手にならないと言いたいんだな!? 将来は伯爵家を継ぐんだぞっ」
「えっ、十六歳なの!? じゃあクリスティーナ様って十五……!?」
「そうだが?」

 妹の方が成長が早いのでは、と思って、エリザはつい彼の頭のてっぺんを見てしまう。

(たぶん並ぶと、大きい順に彼、私、そして超絶美少女かな……)

 さほど身長差が大きくないせいで、違和感はない。

「ないんだけど……ううーん?」
「また何か勝手に考えているのか? 妹がジークハルト様の相手をしているから、僕は暇なんだ。――あ、いいことを思い付いたぞ。お前、僕に庶民の遊びを教えろ」
「……庶民の遊び、ですか?」

 なんて面倒臭い。

 そんなエリザの感想を見て取ったのか、レイラの表情が冷える。

「もう少し社交辞令を覚えたらどうだ?」
「最近、十分覚えているところですよ」

 というか、なんで庶民の遊びなんだろうな。エリザはそんな疑問を覚えつつも、立場的に断れないことを思い出して深い溜息を吐いた。