「外国の術者として、全力であいつを治療してやってくれ。ついでに男色家にならないように外国流の不思議な魔法をかけ――」
「そんなものねぇよ!」

 エリザは、師匠との旅ですっかり悪くなった口調で出てハタとする。

「そもそも、相手の幼馴染もそういう気持ちは持ってないんでしょ」

 咳払いを一つ挟み、言葉を続ける。

「うん、あいつは俺にそういう感情は持っていない」
「なら大丈夫でしょ、結婚を決めるのは本人なんだから」
「けど周りにいる権力者なら、俺をあいつの一生涯の世話役として、花嫁に仕立て上げるのが容易に想像できる」

 お前の周り、どんな貴族がいんの! 怖ぇよ!

 いよいよ関わりたくない。

 エリザは「えぇい、とにかくッ」と言うと、ルディオの襟首を躊躇なく掴み猫のように持ち上げた。

「噂くらいでいちいち騒ぐなっ。いっぺん戻って、自分で状況を確かめて来い!」

 そう告げて家の外に放り出した。

 ルディオが尊敬する眼差しを向けて「腕一本で俺を持ち上げるとか、かっこいい」とか聞こえたが、彼女は無視して扉を閉めた。