少年趣味の疑惑が浮上中のロッカス伯爵といい、妹溺愛の長男といい、伯爵家の男子でまともなのはいないのか。

「すみません、妹様が美少女すぎて崇拝したくはなりましたが、決してやましい気持ちではないんです。というか、私の周りにいた男性はもれなく全員悶えていましたけれど」

 そのへんはいいんですかね、とエリザは気になってちょっち確認してみた。

「何!? くそッ、だから僕も参加したかったのに………!」

 ギリィッっと音を立てるほど強く、レイヤが忌々しげに奥歯を噛み合わせた。

 どうやら彼の呟きを聞くに、父のロッカス伯爵が、彼が所属している騎士団に根回しをして、新人だからと仕事を詰めて出席をさせなかったようだ。

(なるほど。ジークハルト様との挨拶を邪魔させないためか)

 エリザは得心がいった。彼の怒りの矛先がそれたタイミングを活かすべく、自分の身の潔白を主張する。

「いいですか、私は妹様の美しさと愛らしさに崩れ落ちそうになっただけの目撃者の一人にすぎません。これはすなわち、下心でも恋心でもないのです!」
「美しく愛らしい……なるほど、的を射た、率直で素直な表現だ」

 褒めるところそこなのか、とか思ったが怒っていないようなので続けることにした。