彼を見直すたび、何やら、同じ髪と目の色をした人物が喉元まで出かかるのだが、険悪の鋭い目付きで霧散するし――。

 ひとまず、ここは撤収だ。

 エリザは「うん」と頷き、ひとまず出直して一からやり直すことに決めた。扉側へと足を向ける。

「それでは私はこのへんで……」
「逃がすか。僕はお前を探していたんだぞ」

 魔術師団のマントコートを思い切り掴まれた。エリザは咄嗟に「はあ?」と顔にも出してしまった。

「失礼ながら、私はあなた様と面識はございませんが」
「お前が僕の可愛い妹に色目を使ったからだ!」
「……はい?」

 突然怒られてもよく分からない。

「ここまで言っても分からないのか? 白々しいっ」

 彼がパッとマントコートから手を離した。自身の胸元に堂々手をあて、述べる。

「いいかっ、僕の名前はレイヤ・ロッカス! ロッカス伯爵家の長男で、クリスティーナの兄だ!」

 エリザもう少しで叫びそうになった。

(あ、ああああぁぁ! 髪色が一緒なのは超絶美少女だ!)