ラドフォード公爵、なんて優しい人なんだとエリザは思った。

 時間内に戻ってくるのであれば、町を出歩いても構わないとのことだ。ただし、その際には声掛けをして欲しいという。

「外出される際は護衛を付けます。女性が一人歩きというのも心細いでしょうし、公爵家の治療係として顔も少し知られてしまっていますから」
「これまでずっと一人で出歩いてきましたから、大丈夫ですよ。こう見えても十八歳の大人ですから、心配ご無用です!」

 胸を張って自信たっぷりに答えたのだが、なぜかセバスチェンは一層心配そうな表情を浮かべた。

 強い魔法使いほど恐れられる国でもある。

(今は隠していないこの赤い髪を見ると、ちょっと距離を置かれるしね)

 完全な誤解から始まっている【赤い髪の魔法使い】の名前も、へたに手を出されないという点では利点だった。しかも王都は治安もいい。

「ほんと、大丈夫です。町を歩く気分でもないですし。いつ何時、フォローに呼ばれてもいいように屋敷の敷地内にはいるつもりですよ」
「そのプロ魂には尊敬いたします」

 いや、すごく給料をもらう身なので申し訳ないのだ。