エリザは、そこで初めてテンションを下げて口をつぐんだ。

 見ているルディオが、とっても何か言いたそうに唇をきゅっとする。

(うん、言いたいことはよく分かる。でも仕方ないじゃん、超絶美少女なの!)

 だってクリスティーナは、エリザから見ても妹キャラの美少女なのだ。それをルディオには共感して欲しかったのだが、あの残念なモノを見るような目の漢字、無理だなとエリザは諦めの心境になった。


 間もなく、クリスティーナを乗せた馬車が見えたと報告があった。

 セバスチャンがジークハルトを呼びに来て、護衛騎士として声の届かない場所で待機するルディオも同行して出迎える予定だ。

 そんなわけでエリザは、いったん部屋の前で二人を見送った。

 客人がいる間は顔を見せない予定だったので、ひとまず時間潰しのため彼女は書庫へと向かった。

「よいしょ」

 適当に本を見繕って窓辺の席に座った。唐突にできた日中の余暇、つい窓の向こうのいい天気を羨ましく眺める。

(とはいえロッカス伯爵の毒牙はちょっと……)