(うん、これもまた私の役目なんだね!)

 ルディオが隣で「エリオがいて助かった」なあんて言っているのが、ちょっと腹立つ。

 けれど、目の前のあまりに可哀そうな人を放っておけないのも事実だ。ジークハルトはあまりの緊張で、声を掛けたら掛けたで過呼吸になれそうになっていた。

「ど、どどどうしよう。心臓が止まりそうです」
「落ち着いてくださいジークハルト様っ、深呼吸です! お席の方は庭のテラスですし、薔薇園が見るように、という配置で向かい合わせは回避されていますから、ご安心ください。今回は離れた所からしか見守れませんが――」
「いえエリオは離れていて大丈夫です、一人で頑張りますから」

 途端、なぜか珍しくジークハルトが意気込む。

(向けられた手がちょっと震えてはいるけれど……)

 エリザは、ルディオ祖彼の指先に注目してしまった。

 ジークハルトが口の中で挨拶の言葉を復習しながら、胸に手を当てて、何度も大きく息を吸い込む。