『ロッカス伯爵が、予想以上にちょっとしつこくて……可愛いからぜひ君を義息子にして撫で回した――おっほん』
『え。待って、気になります』
『んんっ。とりあえず、ロッカス伯爵は自分の子供に、君と友人になるよう唆しているはずだから、茶会が始まったら顔を見せてはいけないよ』

 昨日、最終打ち合わせでそんな会話をしたのをエリザは思い返す。

 ロッカス伯爵の変態疑惑には最大の警戒中た。

(あのめちゃくちゃ可愛い絶世の美少女と言葉を交わせないのは残念だけど、女であるのに男子として伯爵家から正式に見合いを打診されたりしたら、非常に困る……)

 まだ、偶然にもロッカス伯爵と顔を合わせていないのも救いかもしれない。怖いもの知りたさで見たくもあるが、ちょっと怖い。

(うん。とりあえず今日を乗り切ろう!)

 エリザはラドフォード公爵と短い立ち話を終え、屋敷の二階の廊下を歩く。

 ジークハルトに頑張ってもらうべく朝も指導して彼を励ました。フィサリウスからサポートを頼まれたルディオも、朝一番にやって来て、クリスティーナが訪れるまで彼の私室で一緒に待つことになっている。