「じゃあ、また近いうちに吉報を持ってこよう。少しでも早く解決できるようにね」
「はい。何かあれば尽力いたしますので、いつでもご協力の声掛けを」
「ふふっ、君の方はジークに集中してあげてくれ」

 ジークハルトも知らない王子様との治療話は、そこで終わった。

 扉で待っていた護衛騎士たちと、フィサリウスが出て行く。

 早速絞り込んだとはさすが、と思いつつ、王子業は忙しいはずなので彼の有能さを感じてエリザは敬意の気持ちでまたしても一礼して見送った。

              ※※※

 その翌日、ラドフォード公爵邸は朝から慌ただしかった。

 使用人達は喜々として屋敷内外を整え、ラドフォード公爵も「とうとうここまでッ」と感涙している。

 というのも、本日はクリスティーナ伯爵令嬢の訪問があるのだ。

 あどけなくて砂糖菓子みたいに甘い匂いが漂ってくるような、めちゃくちゃ可愛い、あの妖精みたいな超絶美少女だ。

 フィサリウスが『集中してあげて』と言っていたのは、この予定を知っていたからだろう。

 父親と屋敷の者達の喜ばしさの一方で、それどころか人生最大の苦難であるという顔を朝から晒しているのは、今回の主役であるはずのジークハルトだ。