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 ジークハルトに二対一でチェスにぼろ負けした翌週、禁術書を揃えた書庫で、エリザは唐突にフィサリウスの訪問を受けて驚いた。

「早速何か分かったんですか?」
「ああ、『邪精霊の呪い』というものがあるらしくて」

 言いながら、彼の目がエリザが抱えている本に落ちる。

「……魔法使いの禁断の魔法目録? それ、楽しいかい?」
「いや、まぁ、私は魔力がないので無関係なんですけど、この国にはこんな魔法もあるんだなぁと読書としては面白いというか」
「ふうん、変わっているね」

 魔術より厄介で怖――という感想は呑み込んでおいた。

(うん。精神を操る魔法とか、拷問用とかなんて恐ろしい!)

 正直、見なければよかったなと思って、棚に戻そうとしていたところだった。なので速やかにそれを元の位置にぎゅむっと押し込んで、「どうぞ」とフィサリウスに話の続きを促す。

 彼が何やら察した様子で「ははぁ」と言った。

「なるほど、ホラー系はだめなんだね――」
「うわあぁあぁ私に弱点はありませんっ」