「構いませんよ。ルディオというアドバイザーを付けてもいいですから」

 ジークハルトが、そこにいたルディオを示す。彼は「こいつめちゃくちゃ強いよ?」と同情の声をエリザに投げてきた。

「まぁ……うん、大丈夫。一緒に頑張ろう」
「俺もかよ」

 というわけで、次のスケジュールに合わせて移動する。

(次は、彼らの隊の部屋で書類仕事、だっけ)

 歩きながら、最後にチェスをしたのが二年以上前だったことを思い返す。

 師匠のゼットとは、たびたびチェスをした。彼が魔術で小さくして持っていた自前の道具の一つだ。

 ルールが覚えづらかったし、負かされっぱなしでつまらなかった。

 けれどそのチェスが、勇者の父が送ってからハマッたものだと知ってから、エリザは代わりのようにゼットの相手をつとめた。

(でも子供相手だからといって、容赦なしの人だったなぁ)

 もう二年も過ぎたのに、鮮明に思い出させるものだなと苦笑する。

 その時、ふと手を握られた。それがジークハルトの手だと気付いて反射的にびくっとしてしまった。