【王国魔術師団長、ゼット】
それが、彼の本当の肩書きと名前だった。
部下達に『数年だけ時間をくれ』と蒸発することを告げて、赤子だったエリザを連れて最長の転移魔術を行使した。
だからエリザは、両親の顔は知らない。
けれど、二人が与えてくれたという魔法の指輪があった。
『時が来るまで、あなたを守ってくれますように』
それは誰にも外すことができない【怪力の加護】だ。魔法が使えない代わりに持たせてくれたものらしい。
はじめは使い方に手間取った。
でもその指輪と、そして母から受け継いだ〝性質〟があれば、難なく生きていける場所が選ばれていたのだ。
聖女だった母の性質か、魔術師という言葉がないこの遠い国で『魔物』と呼ばれる存在は、エリザが触れるとたちまち銀色の光に焼かれ、灰となって崩れた。
幼少の頃、それを初めて目の当たりにしたゼットも珍しく驚きの表情を見せた。
「――お前、その身一つで浄化できんのか。便利だな」
それが、彼の本当の肩書きと名前だった。
部下達に『数年だけ時間をくれ』と蒸発することを告げて、赤子だったエリザを連れて最長の転移魔術を行使した。
だからエリザは、両親の顔は知らない。
けれど、二人が与えてくれたという魔法の指輪があった。
『時が来るまで、あなたを守ってくれますように』
それは誰にも外すことができない【怪力の加護】だ。魔法が使えない代わりに持たせてくれたものらしい。
はじめは使い方に手間取った。
でもその指輪と、そして母から受け継いだ〝性質〟があれば、難なく生きていける場所が選ばれていたのだ。
聖女だった母の性質か、魔術師という言葉がないこの遠い国で『魔物』と呼ばれる存在は、エリザが触れるとたちまち銀色の光に焼かれ、灰となって崩れた。
幼少の頃、それを初めて目の当たりにしたゼットも珍しく驚きの表情を見せた。
「――お前、その身一つで浄化できんのか。便利だな」