大きな課題だったから、キャンディーではなく彼の希望を叶えることになる。

「まぁ、そうですね。何がいいですか?」

 するとジークハルトが、ふにゃりとした笑みを浮かべた。

 まるで子供が、信頼しきった親や兄弟に見せるような笑みに、エリザはつい目を奪われた。

 ジークハルトは、王子フィサリウスに次いで見目が麗しい。実に強烈である。通りすがり居合わせた女性達が、ほぅっと熱のこもった吐息をつくのが聞こえてきた。

(くそっ、無駄にキラキラした顔しやがってっ)

 一瞬思考が止まってしまっていたエリザは、慌てて自分を取り戻す。心臓がまた変になりそうで心の中で平常芯と何度も唱えた。

「それなら、時々でいいのでチェスの相手をしてくれませんか?」
「チェス? まぁ、いいですけど」

 それくらいであれば問題ないと思い、エリザは頷いた。

「ただ、私はあまりやらないのでルールがうろ覚えになっているかもしれませんが」