「ジークの呪いを解く。大昔の『まじない』だから調べるのに苦労しそうだけど、突き止めて、その解除方法を探し出す」
「はい」

 引き締まった彼の雰囲気を見て、エリザも背を伸ばした。

「この件は僕の方で調べておく。もしかしたら君の知識も借りるかもしれないが、その時はよろしく」
「もちろんです」
「ああ、そうだ、代わりにと言ってはなんだが王宮の本は好きに読んでいいよ」
「……本?」
「ラドフォード公爵からは、この国の本に興味があるらしいとは聞いている。彼伝えで許可証を渡しておくから、待っているといいよ。軍の書庫でも自由に出入りできるものだ」

 王宮でジークハルトを待っている間、何をしてどこで暇をつぶそうか悩まずに済みそうだ。

「ありがとうございます」

 エリザは、親切な王子に心から礼を述べた。

 これで話は終わりだろう。そう思って菓子を一つ食べ、甘さにほっとしながら、美味しい紅茶を最後までのもうとした時だった。

「ところで、君の本当の名前を聞いてもいいかな?」
「ごほっ」

(なんたる不意打ち)

 エリザは、眩しいフィサリウスの笑顔を困ったように見た。王子様にそんなこと言われたら、答えないといけなに決まっているではないか。