「たとえば恋心を抱く夢見がちな女の子がいて、そんなことになるとは思いもせず自分だけを見て欲しいと思って、見よう見真似で『まじない』をかけてみた――とか」

 確かに、そう考えるととっても自然……な気がしてきた。

 でも同時に、頭が痛い話だ。

「はぁ……なんと迷惑な……じゃあ、ああいう反応になることも分からないし、本人も成功したことにすら気づいていない、わけですね」
「そのうえ魔力関係ではないので、私でさえ感知も解くことも不可能」

 フィサリウスはこの国の魔法使いという存在の中では、かなり上、それでいて特殊な位置づけであるらしい。

(私の指輪の魔術を、察知できるくらいだもんね……)

 話がひと段落話したようで、彼が紅茶を飲んだのでエリザもそうした。

 偶然にも成功して呪いが発動した。そしてジークハルトは、女性に対してあんなふうに怖がるようになってしまった――。

 いい香りを嗅ぎながら、エリザはしばしぼうっとして考える。

「じゃあ、ジークハルト様が私に心を許して懐いてくれているのも、もしかしたら術のせいかもしれませんねぇ」
「そうかなぁ、あれはどちらかというと……」