浄化の力だ。呪いには絶対にかからないし、呪われている射当ての影響力も無効化する。

(ジークハルト様、本気で怖がっているみたいだったし……)

 いつだったか、エリザはそこがちょっと引っかかったのだ。

 苦手だとか、トラウマを思い出して震えるとかではなく、近付かれることへ異常なほど恐怖にかられている感じがあった。

「女性に近付きたくないとする強烈な恐怖感、蕁麻疹、最悪は気絶する呪い……それが病気の正体だとして、術者にいったいなんの得があるんでしょう?」
「他の女性に近付けなくするため、とか」
「……は?」

 フィサリウスが、楽しそうに目を細めた。

「ふふ、本気で考え付かなかったという顔だね?」
「だ、だって、それだけであんなふうに呪いをかけるんですか?」
「今ではなくなってしまった『まじない』なんだ。本人も知らぬところで、と考える方が自然じゃないかな。当時集まっていたのは子供達だ」

 エリザは「あ」と声を上げた。

「え。じゃあ、陰謀とか、そういうのではなくて子供の……?」