「他人には外せません、それは私を守るために父と母が作ったからだと師匠は言っていました。必要がなくなった時には、他人に外させることができる、とか」
「それは興味深いね。君を守れる相手だと指輪が認めたら、外すことができるわけだ」
「そんなふうに考えたことはありませんでした……ほら、環境的な脅威がなくなると、とか?」

 自分の考えを述べたが、彼ははぐらかすように指を差した。

「身体強化の効果も、この指輪が?」
「いえ、師匠から戦闘訓練をされたんです。彼は戦闘魔術師団長でした」
「そんな大物が、どうして君を育てることになったのかな」
「私の両親が――聖女と、勇者だったそうです」

 まったく予想にしていなかった言葉だったのか、フィサリウスが目を丸くした。

 エリザは生まれた際、自分が少しの間死んでいて、聖女の母と勇者の父が願った想いで蘇生してしまったのだと打ち明けた。

 それが、彼女のいた国では禁忌だった。

 生き返させられたなんて自分でも実感はない。けれど、師匠のゼットが捧げた十六年は、嘘を吐かない。

「生きる、と決めました。一人の旅になろうと師匠達が生かしてくれたこの命を、最後まで生きようって」