「ルディオがどうして考え込むの。いいから、席かわって――」

 唐突に、彼の横から伸びた手がエリザを両脇から抱え上げた。

「うわぁっ」

 浮遊感に驚いた次の瞬間、ソファの背を越えていた。

 目を瞑った一瞬後、ぼすっとお尻が落ちるのを感じた。

 恐る恐る目を開けてみると。ジークハルトの膝の上に座っていた。ばっと肩越しに振り返ると、すぐ上に彼の顔があってびっくりした。

「……あの、ジークハルト様。これはどういう……?」

 彼に蕁麻疹が出ないかと思って緊張した。

 出ないことは数日かけて検証済みだ。しかし、エリザは女性なので、いつ発症されてもおかしくない。

「こうしている方が安心感があります。食べさせやすいですし」

 取って付けたようにそう言った彼は、どこか楽しそうだった。早速ケーキがのった皿を引き寄せている。

(……もしや、あなた様は世話を焼くような弟でも欲しかったのですか?)

 先生みたいに尊敬している魔法使いではなかったのか。