エリザだって、どうして『食べさせたい』になっているのか分からない。人の視線がある中では、ちょっと恥ずかしい気がしてくる。

「あの……このケーキは、ジークハルト様のご褒美であって」

 なんとか話題をさらせないか考える。しかし再びじっと見つめてきたジークハルトの瞳は、まるで獲物を追い詰める狩人のような――。

 完全に思考が行き詰った。言葉が続かない。

 その時、不意にジークハルトがにっこりと美麗な微笑みを向けてきた。

 エリザは、引き攣りながらもどうにか笑みを返した。気のせいでなければ、笑顔に圧を感じる。

 これは、素直に従ったほうが平和的に解決する、ような気がする。

「――分かり、ました。それでジークハルト様の不安がなくなるようでしたら」

 頷くと、ジークハルトから圧が消えてくれた。

 にこにこと楽しそうな表情を浮かべたのを見て、胸を撫で下ろす。ルディオを見てみると、ぽかんと口を開けていた。

「なんて顔してんの」
「いや、なんというか……うーん?」