聞き間違いだろうかと思って見つめ返すと、そこにはおずおずといった様子で窺ってくるいつものジークハルトがいた。

 説得で落ち着いたようで安心するが、ちょっと耳を疑う。

「……すみませんジークハルト様、もう一度言っていただけますか?」
「メイドに食べさせられていたのを見てから、胸がずっとぐるぐるしているんです。他の誰かに餌付けされるのがとても癪なので、僕もエリオにあげたいのです」

 自分の役を盗られたようで不安定になった、ということだろうか?

(……いやいやいや、それはおかしいでしょ)

 エリザは心の中でツッコミした。

 雇われた治療係であって、主人に食べさせてもらうのはまず違う。

 思い返せば舞踏会以来、ジークハルトにティータイム時に菓子などを口に入れられている。彼にとって餌付けだったというのも驚きだ。

(いや、そうでなく、流されるように普通に食べている私も問題なのか)

 ルディオ達が、唖然として眺めているのが肌でも分かった。